一宮野口ファミリー歯科 院長の野口です。
「指しゃぶりがなかなかやめられない」 「おしゃぶりはいつまで使っていても大丈夫?」 「このまま続けると、歯並びに影響するのでは?」
このようなお悩みをお持ちの保護者の方は、少なくないのではないでしょうか。
特に2〜3歳ごろになると、周りのお子さんが指しゃぶりを卒業し始めたり、健診などで歯並びについて指摘されたりして、心配になることもあると思います。
指しゃぶりやおしゃぶりは、赤ちゃんから小さなお子さんによく見られる自然な行動です。眠いときや不安なときに気持ちを落ち着かせたり、安心して眠りについたりするための、大切な役割を果たしていることもあります。
そのため、指しゃぶりをしているからといって、すぐにやめさせなければいけないわけではありません。
一方で、年齢が上がっても長時間続いていたり、強く吸う習慣が続いていたりすると、歯並びやかみ合わせに影響することがあります。
今回は、指しゃぶりやおしゃぶりをする理由、歯並びへの影響、卒業をサポートする方法、歯科医院に相談する目安について、わかりやすく解説します。
1.なぜ指しゃぶりやおしゃぶりをするの?
指しゃぶりは、乳幼児期によく見られる行動のひとつです。
赤ちゃんは、お母さんのおなかの中にいるときから指を吸うような動きをすることがあります。生まれてからも、口に触れたものを吸おうとする反射が見られ、指しゃぶりやおしゃぶりを通して安心感を得ることがあります。
成長してからも、指しゃぶりにはさまざまな理由があります。
例えば、次のような場面です。
- 眠くなったとき
- 退屈しているとき
- 不安や緊張を感じたとき
- 疲れているとき
- 気持ちを落ち着かせたいとき
このように、指しゃぶりは単なる癖ではなく、お子さんが自分の気持ちを落ち着かせるための方法になっていることがあります。
特に、眠る前や慣れない場所にいるときなどは、指しゃぶりをすることで安心できるお子さんもいます。
そのため、指しゃぶりを無理に禁止したり、強く叱ったりすると、かえって不安が強くなり、指しゃぶりの回数が増えてしまうこともあります。
まずは「どうして指しゃぶりをしているのかな?」と、お子さんの様子を観察してみましょう。
眠いときに限られているのか、日中も頻繁にしているのか、不安な場面で増えるのかを知ることが、卒業をサポートする第一歩になります。
2.指しゃぶりやおしゃぶりはいつまで様子を見てよい?
指しゃぶりやおしゃぶりは、年齢だけで一律にやめさせる必要があるわけではありません。ただし、成長に合わせて少しずつ使用頻度を減らしていくことが大切です。
乳幼児期は安心できる習慣のひとつ
赤ちゃんから1〜2歳ごろまでは、指しゃぶりやおしゃぶりによって気持ちを落ち着かせることも多く、発達の過程で見られる自然な行動です。
この時期は、無理にやめさせることよりも、お子さんが安心して過ごせる環境を整えることを大切にしましょう。
2〜3歳ごろから少しずつ卒業を意識
2〜3歳ごろになると、言葉で気持ちを伝えたり、遊びに集中したりする時間が増えてきます。
そのため、成長とともに自然と指しゃぶりの回数が減っていくお子さんもいます。
この時期は、指しゃぶりをしていることだけを問題にするのではなく、いつ、どのくらいの時間、どのような強さで吸っているかを確認することが大切です。
例えば、眠る前だけに短時間している場合と、日中も長い時間、強く指を吸っている場合とでは、考え方が異なります。
3歳を過ぎても続く場合は、一度相談を
3歳を過ぎても指しゃぶりやおしゃぶりの使用が続いている場合は、歯並びやかみ合わせへの影響がないか、一度確認しておくと安心です。
特に、日中も頻繁に指を吸っている、吸う力が強い、前歯のかみ合わせが気になるといった場合は、早めに小児歯科で相談しましょう。
ただし、3歳になったら必ずやめなければいけないというわけではありません。お子さんの発達や習慣、歯並びの状態に合わせて、無理のない方法を考えていきましょう。
3.指しゃぶりが歯並びに影響するのはどんなとき?
指しゃぶりやおしゃぶりを長時間続けると、歯やあごに継続的な力が加わります。その力のかかり方によっては、歯並びやかみ合わせに影響することがあります。
特に注意したいのは、次のようなケースです。
- 日中も長い時間、指しゃぶりをしている
- 強く指を吸い、指にタコや赤みができている
- 年齢が上がっても指しゃぶりの頻度が減らない
- おしゃぶりを長時間、日常的に使用している
指しゃぶりによって見られることがある歯並びやかみ合わせの変化には、次のようなものがあります。
上の前歯が前に出る「上顎前突」
指を吸う力や、指を口の中に入れる位置によっては、上の前歯が前方に傾くことがあります。
いわゆる出っ歯のように見える状態につながることがあり、唇を閉じにくくなる場合もあります。
前歯がかみ合わない「開咬」
奥歯をかみ合わせても、上下の前歯の間にすき間ができてしまう状態を「開咬(かいこう)」といいます。
指しゃぶりを続けることで、上下の前歯の間に指が入る状態が繰り返され、前歯がかみ合いにくくなることがあります。
前歯で食べ物をかみ切りにくくなったり、舌の動きや発音に影響したりする場合もあるため、気になる変化があれば相談しましょう。
歯並びだけでなく、口の機能にも注目
歯並びやかみ合わせの変化がある場合には、食べ物のかみ方、舌の使い方、唇を閉じる様子なども確認することが大切です。
ただし、指しゃぶりをしているお子さん全員に歯並びの問題が起こるわけではありません。影響の程度は、吸う力や時間、頻度、指を入れる位置などによって異なります。
また、指しゃぶりをやめれば必ず歯並びが自然に整うとも限りません。歯並びの状態によって対応が異なるため、必要に応じて歯科医院で確認しましょう。
4.指しゃぶりをやめるために、家庭でできること
指しゃぶりを卒業させたいと思っても、強く注意したり、無理に指を外したりするだけでは、なかなかうまくいかないことがあります。
大切なのは、お子さんが安心して少しずつ習慣を変えられるようにサポートすることです。
① 叱らず、やさしく声をかける
「また指を吸っているよ!」「いつになったらやめられるの?」と繰り返し注意すると、お子さんが不安や緊張を感じてしまうことがあります。
指しゃぶりは、本人も無意識にしていることが多い行動です。
指しゃぶりをしていることを責めるのではなく、「おててで遊んでみようか」「一緒に絵本を読もうか」など、別の行動に自然に誘導してみましょう。
できなかったことを指摘するよりも、指しゃぶりをせずに過ごせた時間を一緒に喜ぶことが大切です。
② 手を使う遊びを増やす
日中、退屈な時間に指しゃぶりをすることが多い場合は、手を使う遊びを取り入れてみましょう。
例えば、次のような遊びがおすすめです。
- お絵描きやシール貼り
- 積み木やブロック遊び
- 粘土遊び
- 絵本を一緒にめくる
- 公園で体を動かす遊び
夢中になれる遊びが増えると、自然と指しゃぶりをする時間が減ることがあります。
無理に指しゃぶりをやめさせようとするのではなく、楽しく過ごせる時間を増やすことを意識してみましょう。
③ 眠る前は安心できる習慣をつくる
寝る前に指しゃぶりをするお子さんは、指を吸うことで安心して眠りにつこうとしているのかもしれません。
そのような場合は、指しゃぶりを急に禁止するのではなく、別の方法で安心感を得られるようにしてあげましょう。
例えば、次のような方法があります。
- 寝る前に絵本を読む
- 手をつないで眠る
- やさしく背中をさする
- 毎晩同じ時間に寝る準備を始める
- お気に入りのぬいぐるみなどをそばに置く
眠る前の流れを決めておくと、お子さんが安心しやすくなります。
指しゃぶりをしないと眠れない場合でも、すぐにやめさせようと焦らず、少しずつ別の安心できる習慣に移行していきましょう。
④ できたことを一緒に喜ぶ
指しゃぶりをしない時間が少しでも増えたら、その変化を認めてあげましょう。
例えば、「今日はおもちゃで遊んでいる間、指を吸わずにいられたね」「頑張ったね」と声をかけてみてください。
お子さんが楽しめそうであれば、カレンダーにシールを貼る方法もおすすめです。
ただし、できなかった日に叱ったり、シールが貼れないことを責めたりする必要はありません。
指しゃぶりは、すぐに完全にやめられるとは限りません。できる日とできない日を繰り返しながら、少しずつ減らしていくこともあります。
お子さんのペースに合わせて、前向きに取り組めるようにしましょう。
⑤ 指しゃぶりをする場面を観察する
指しゃぶりを減らすためには、どのような場面で起こりやすいのかを知ることも大切です。
眠いときに多いのか、テレビを見ているときなのか、保護者の方と離れるときなのかによって、必要なサポートは変わります。
例えば、テレビを見ているときに多い場合は、手に持てるおもちゃを用意してみる方法があります。
不安なときに多い場合は、安心できる声かけやスキンシップを増やすとよいでしょう。
指しゃぶりを単にやめさせることだけを目標にせず、お子さんが安心して過ごせる方法を一緒に見つけていくことが大切です。
5.おしゃぶりはいつまで使ってよい?
おしゃぶりも、赤ちゃんが気持ちを落ち着かせたり、眠りについたりする際に役立つことがあります。
一方で、長期間、頻繁に使用すると、歯並びやかみ合わせに影響することがあります。
そのため、おしゃぶりについても、成長に合わせて少しずつ使用時間を減らしていくことを考えましょう。
使う場面を少しずつ限定する
まずは、おしゃぶりを使う場面を見直してみましょう。
例えば、日中に何となく使っている場合は、遊んでいる時間には使わず、眠る前など必要な場面に限定する方法があります。
日中の使用時間を減らし、慣れてきたら寝る前の使用についても少しずつ見直していきます。
急に取り上げると不安が強くなるお子さんもいるため、様子を見ながら進めましょう。
おしゃぶりの卒業も、無理なく進める
おしゃぶりを卒業するときは、お子さんが安心できる別の方法を用意しておくと取り組みやすくなります。
絵本を読む、手をつなぐ、やさしく声をかけるなど、眠る前の習慣を工夫してみましょう。
また、おしゃぶりを使わずに過ごせたときは、できたことを一緒に喜んであげてください。
おしゃぶりの使用期間や歯並びへの影響には個人差があります。使用を続けてよいか迷ったときは、年齢だけで判断せず、歯科医院で相談することをおすすめします。
6.こんな場合は小児歯科に相談しましょう
指しゃぶりやおしゃぶりについては、家庭で様子を見ながら対応できることもありますが、歯並びやかみ合わせに変化が見られる場合には、歯科医院での確認が大切です。
特に、次のような場合は一度ご相談ください。
- 3歳を過ぎても指しゃぶりが頻繁に続いている
- 日中も長時間、指を吸っている
- 強く吸うため、指にタコや傷ができている
- 上の前歯が前に出ているように見える
- 奥歯をかみ合わせても前歯が閉じない
- 発音や食べ物のかみ切り方が気になる
- おしゃぶりを長時間使用する習慣が続いている
歯科医院では、歯並びやかみ合わせの状態を確認し、指しゃぶりを続けることによる影響がないかを評価します。
すぐに特別な治療が必要になるとは限りません。お子さんの年齢や発達、習慣に合わせて、経過を見ながら対応を考えていきます。
また、保護者の方だけで卒業をサポートするのが難しい場合も、遠慮なくご相談ください。
ご家庭での声かけや習慣づくりについても、お子さんに合った方法を一緒に考えていきましょう。
7.指しゃぶり・おしゃぶりについてのよくある質問
Q.寝るときだけ指しゃぶりをしています。やめさせたほうがよいですか?
寝るときだけ指しゃぶりをしている場合は、安心して眠るための習慣になっていることがあります。
日中はほとんど指しゃぶりをせず、頻度も減ってきているのであれば、無理に急いでやめさせるのではなく、歯並びの状態を確認しながら見守ることもできます。
ただし、寝ている間も長時間、強く吸っている場合や、前歯のかみ合わせが気になる場合は、一度歯科医院で相談しましょう。
眠りについたあとに指をそっと外す方法もありますが、無理に繰り返す必要はありません。お子さんの睡眠を妨げないようにしながら、様子を見てください。
Q.強く注意したら、かえって指しゃぶりが増えてしまいました。
強く禁止されたことで不安や緊張が高まり、指しゃぶりが増えるお子さんもいます。
その場合は、いったん叱ることをやめて、安心して過ごせる環境を整えることから始めてみましょう。
指しゃぶりをしているときに注意するよりも、手を使った遊びに誘ったり、一緒に絵本を読んだりして、別の行動に自然に切り替えられるようにサポートするのがおすすめです。
卒業には時間がかかることもあります。保護者の方も焦らず、お子さんのペースを大切にしてください。
Q.指しゃぶりをやめれば、歯並びは自然に治りますか?
指しゃぶりによって生じた歯並びやかみ合わせの変化は、習慣をやめたあと、成長とともに改善する場合があります。
ただし、すべてのケースで自然に整うわけではありません。変化の程度やお子さんの成長によっても異なります。
前歯がかみ合わない状態や、歯が大きく前に出ている状態が気になる場合は、指しゃぶりをやめることだけで様子を見るのではなく、歯科医院で確認してもらいましょう。
Q.指しゃぶりを無理にやめさせるために、手袋などを使ってもよいですか?
まずは、叱らずに声をかけたり、手を使う遊びを増やしたりする方法から試してみましょう。
手袋などで指を吸いにくくする方法は、お子さんによってはストレスになることもあります。無理に制限するのではなく、必要性や方法について歯科医院で相談しながら進めると安心です。
また、指に苦味のあるものを塗るなど、お子さんが嫌がる方法を自己判断で行うことは避けましょう。
Q.おしゃぶりと指しゃぶりでは、どちらが歯並びに影響しますか?
どちらも、使用する時間や頻度、吸う力などによっては、歯並びやかみ合わせに影響する可能性があります。
一概にどちらが必ず悪いとはいえません。お子さんの年齢や使用状況、歯並びの状態を踏まえて考えることが大切です。
おしゃぶりを使っている場合も、長時間の使用を避け、成長に合わせて少しずつ卒業を目指しましょう。
8.まとめ|焦らず、お子さんのペースで卒業を目指しましょう
指しゃぶりやおしゃぶりは、乳幼児期によく見られる自然な行動であり、お子さんが安心感を得るための大切な役割を果たしていることがあります。
そのため、指しゃぶりをしているからといって、すぐに無理やりやめさせる必要はありません。
一方で、長時間、頻繁に続いている場合や、強く吸う習慣がある場合は、歯並びやかみ合わせに影響することがあります。
大切なのは、次のポイントです。
- 指しゃぶりをする理由や場面を観察する
- 叱らずに、手を使う遊びや安心できる習慣を増やす
- できたことを認め、少しずつ卒業をサポートする
- おしゃぶりは使用する場面を決め、徐々に時間を減らす
- 歯並びやかみ合わせに気になる変化があれば歯科医院に相談する
指しゃぶりの卒業には、お子さんによって個人差があります。周りのお子さんと比べて焦る必要はありません。
保護者の方が一人で悩みを抱え込まず、お子さんの成長に合わせて無理のない方法を見つけていきましょう。
当院では、お子さんのお口の状態や成長に合わせて、歯並びやかみ合わせについてのご相談をお受けしています。
「指しゃぶりがなかなかやめられない」「おしゃぶりをいつまで使ってよいか迷っている」「歯並びへの影響が心配」など、気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。


